疲労とストレス


過労死という言葉が社会問題になる現代、健康な心身を維持するために「疲労」についての正しい認識が大切です。

まず、「疲労」と「疲労感」を区別して考えます。疲労は、身体の疲れ・消耗で根本的なものであり、疲労感は疲れを感覚として感じているものです。栄養ドリンク剤で解消されるのは、感覚としての疲労感だけで、根本的な身体の疲労は回復しません。

また、疲労を理解するうえでストレスとの関りを認識することも大切です。ストレスも「ストレッサー(ストレス源)」と「ストレス反応」を区別して考え、これが疲労にどのような影響を与えるのかが重要です。

疲労と疲労感

【疲労(原因)】

疲労は疲労因子(リン酸化eIF2α)が増殖した状態です。身体を生成するために大切なタンパク質合成因子(eIF2α)が、労働や運動の負荷、精神的な負担、感染症などの肉体的な負担でリン酸化してしまうと疲労因子が生まれます。

タンパク質合成因子が疲労因子に変化してしまうと、人体を構成する材料であるタンパク質の合成が阻害され臓器の働きが低下したり、機能障害が起きます。これが、「疲労」です。

 

【疲労感(感覚)】

心身の根本的な疲れや消耗は「疲労」として、心身の中に内在します。この疲労を放置すると大病に繋がったり、心身に異常をきすため、心身の健康を守るための生体アラームが発動されます。これが「疲労感」です。

疲労感は、身体に疲労が溜まっているから気づきなさいという警告です。この警告に従って身体のケアを行うことが大切です。休息をとったり、身体の細胞のメンテナンスを行います。

疲労感は、炎症性サイトカインという物質が脳に作用することで感じる感覚です。炎症性サイトカインは、身体の仕組みである免疫機構がウイルスやがん細胞などに反応して、自身を守ろうとして作り出される物質です。

疲労因子(リン酸化eIF2α)が作用して炎症性サイトカインを作り、それを脳が感知すると疲労感として身体の健康を守るアラートが鳴ります。「疲労感」は身体に備わった大切な防御システムです。

疲労と疲労感

「疲労」と「疲労感」を区別して考えることが重要です。ドリンク剤などで疲れた感覚だけを解消しても、実際の身体の根本的な疲労の軽減にはなりません。疲労因子が溜まった疲労状態では、タンパク質の合成に障害があるため身体の回復や修復ができません。

誤魔化しながら身体を使い続けていると増大した疲労の蓄積を招き、身体の不調の悪循環に陥ります。

疲労とストレス

【ストレス】

一般的にストレスという言葉は、包括的な意味あいで使われていますが、「ストレッサー」というストレスの原因とその原因から引き起こされる「ストレス反応」を区別して考えることが大切です。

ストレッサーは、心身にかかる外部からの刺激で、天気や騒音など環境的要因・病気や寝不足などの身体的要因・不安や悩みなどの心理的要因・労働や職場など社会的要因などさまざまです。

ストレッサーに適応するために、身体はストレス反応を起こします。脳がストレッサーを感知すると、副腎から抗ストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンが分泌されます。

コルチゾールは、炎症性サイトカインの抑制をし疲労感を軽減させるホルモンです。アドレナリンは、身体を活性化し元気が出る状態にするホルモンです。

これらのホルモンは、私たちが労働や運動する時に、頑張れるように応援してくれるような作用をします。心身の健康サイクルが保たれている状態で、適度なストレッサーに対してはとても有効に働くのです。

 

【疲労とストレスの関係】

過剰労働で疲労が溜まった身体は、「身体がだるい、つらい、ねむい」など疲労感を感じて「休め!」とアラートを出します。しかし同時に、「この仕事やらなければならない」というストレッサーを感知すると、ストレス反応はホルモンを分泌して疲労感を軽減し身体を興奮状態にして「頑張れ!」というシグナルを出します。

 

ここで重要なことは、ストレスの働きで疲労感は抑えられても疲労は蓄積されているということです。

 

疲労とストレスの関係は、ストレスが疲労の原因ではなく、疲労感とストレスが対抗しあって疲労を蓄積させてしまうということです。このサイクルを続けていくと、疲労感とストレスは増幅していき極限まで大きくなった時にバランスがくずれて、強い疲労感が前面に出てきます。そして、身体には疲労が蓄積され続けた状態で残っているのです。

疲労因子の増加による機能障害が重要な臓器である脳や心臓で起これば、脳梗塞や心不全につながる可能性もあります。

疲労の回復

身体の健康を保つためには、疲労感の軽減をドリンク剤に頼るのではなく、「疲労」根本を解消しましょう。

疲労回復に欠かせないのは睡眠です。脱リン酸化酵素という疲労回復因子は休息中に働く酵素です。これは軽度な運動をすることで増えます。

睡眠と運動で回復できないような場合は、鍼灸治療、マッサージ治療をおすすめします。

自律神経のバランスを整えて、きちんと眠れる身体づくりをします。そして、血流の改善をし、弱った細胞に酸素や栄養分を運び活性化させ、身体の回復力を促します。代謝機能を高め老廃物などの不要な物質を体外に排出していきます。

疲労感を軽視せず身体のメンテナンスをしていくことが大切です。

(参考図書:「疲労ちゃんとストレスさん」監修・原作:近藤一博 河出書房新社)


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