パーキンソン病の非運動症状と治療


自律神経症状

身体のほとんどの器官は自律神経によって無意識のうちに調整されています。パーキンソン病ではこの自律神経の働きが阻害され全身に様々な症状が出てきます。

 

その代表的な症状のひとつが胃腸の働きの低下に伴う便秘で、多くの患者さんが困っていらっしゃいます。排便を促す腸の蠕動運動は自律神経の作用によって機能しています。自律神経の乱れが生じると腸の動きが活発にならずに排便がスムーズに出来なくなります。運動症状である腹筋の衰えや肛門括約筋がこわばり、運動不足などの要因も加えて便秘になりやすい状態にあります。また、治療薬による副作用で便秘が生じる場合もあります。

 

起立性低血圧もよくみられる症状です。私たちが立ち上がる時、自律神経は足の血管を自動的に収縮させて脳の血圧が低くならないように調整しています。パーキンソン病の患者さんは、そうした血圧の自動的な調整がうまくいかなくなるため、立ち上がった瞬間に血圧が急激に低下して立ちくらみを起こします。

 

このほか、尿が出きらない排尿困難、頻尿、尿失禁などの排尿障害や体温の調節障害による手足の冷え、むくみなども多くみられる症状です。


精神症状

パーキンソン病の患者さんから「気分が落ち込む」「意欲がわかない」「眠れない」と訴える声をよく聞きます。こうした抑うつ症状は、病気に対する不安によって引き起こされる場合とパーキンソン病そのものの症状として出現している場合があります。

思うように身体が動かなくなり以前出来ていたことが出来なくなってしまうこと、進行性の難病に対して将来の不安は深刻なものです。

そして、パーキンソン病は前向きな意欲や喜び、快楽などに関わりの深い神経伝達物質ドーパミンが減少する病気であるため、ポジティブな感情が湧きにくかったり、やる気が起こりにくい状況でもあります。

 

病気が進行すると無関心になったり、注意力や記憶力が低下したり、幻覚や妄想などの精神症状が出てくることもあります。


睡眠障害

床についてもなかなか眠れない、夜中に何度も起きてしまうというように不眠症を引き起こすこともあります。要因は複数あり、身体が思うように動かなくなるために運動不足になったり、排尿障害のために夜中に何度もトイレに行きたくなったり、抑うつ状態が続いたり、その結果、熟睡することが出来なくなり不眠症を招きます。

また、寝返りがうてなくて身体が痛くて目が覚めることや入眠時に足がむずむずして眠れないなどの症状もよくみられます。

 

睡眠不足は日中の生活や体調にも大きな影響を与えます。生活のリズムが乱れて日中にとても眠くなってしまい、更に夜中の不眠を誘因します。体調不良は頭痛や食欲不振から様々な症状に及びます。


認知障害

認知機能は脳が指令をくだして身体がそれを遂行する機能で、加齢とともに少しずつ衰えますが、パーキンソン病の症状が進行するにつれて認知機能低下があらわれる方もいます。

 

頭に浮かんだことを具体的に順序立てて計画し実行するという一連の行動が出来なくなる「遂行機能障害」や以前に記憶したことを引き出したり、直近に見たものを記憶したりする能力が低下する「記憶障害」などの症状が見られます。

 


疲労や疼痛・体重減少

身体にあらわれる痛みの症状は、パーキンソン病の運動症状の影響が多く見られます。筋肉がこわばり筋肉や関節の固縮で手足などが動かしにくくなると、血流も悪くなり細胞に酸素が欠乏し発痛物質がたまったままになります。身体の動きも鈍くなり思うように動けなくなる傾向から運動不足になり、更に筋肉の柔軟性や筋力が失われます。

また、パーキンソン病による首曲がりや腰曲がりの症状が起きたり、立位や座位や歩行の姿勢保持が難しくなったりと、バランスの悪い状態での身体の使い方が多くなります。そのような状態が身体のゆがみを悪化させ筋肉の過緊張や脊椎の変形を招き、神経を圧迫して更なる痛みを生むこともあります。


非運動症状の鍼灸治療

身体のほとんどの器官は自律神経(交感神経と副交感神経)でコントロールされています。呼吸・血液循環・消化吸収・排泄・内分泌(ホルモン)など、あらゆる体内循環をつかさどっています。そのため、自律神経の乱れは、便秘・不眠・冷えを始めさまざまな症状にあらわれます。

そして、免疫に関わる白血球はマクロファージ・顆粒球・リンパ球の大きく3つの免疫細胞で構成され、それぞれの割合が保たれていることが正常な免疫機構には必要です。この免疫細胞の増減も自律神経が左右します。

自律神経の乱れはストレスや緊張、心身の疲労で交感神経が過剰に働いている状態などが原因となります。

鍼灸治療の刺激は中枢神経を介して過緊張になってバランスを崩した自律神経を整える働きがあります。

自律神経がバランスよく働くと身体の体内循環が正常になり、低下した内臓機能の改善や身体全体の血流の改善につながります。

 


【鍼治療】

鍼治療は痛みの治療、特に慢性痛に効果を発揮します。非運動症状としてあらわれる身体のさまざまな部位の疼痛に鍼治療で痛みの軽減を図ります。 

鍼は刺激した組織に白血球を誘導して障害を受けていた細胞を活性化させます。筋肉の深部の痛みやコリまで直接届く鍼治療は、筋肉を緩める効果が高く、血行を促進させて発痛物質を排出させます。

また鍼の刺激は信号ともなって中枢神経へ伝達されて痛みを感じる脳を鎮静化します。

痛みの少ない身体になることで不安や悩みが減り、日々を快適に過ごすことが出来るようになります。

【灸治療】

灸治療は自律神経症状としてあらわれる便秘にはとても有効です。排便に必要な腸の蠕動運動は自律神経の作用で機能していて、副交感神経が優位な状態で腸の動きは促進されます。灸の心地よい熱刺激は自律神経を整え、腸の冷えを改善し血行を促進すると共に、深いリラックス効果があります。

また、免疫細胞は腸に多く集まっているため、腸内環境を整えることは免疫機構の正常化にもつながります。

灸治療の熱刺激は身体の冷えの改善にも効果的です。パーキンソン病のように運動量や筋肉量が減ると身体の代謝機能が衰えて熱エネルギーを生産することが難しくなり、冷えの体質を作ってしまいます。手足やお腹、背中など全身のツボから選択し、灸の熱刺激を身体に入れることで弱って冷えている臓器や筋肉などの代謝を高めて血行を促進します。

 

症状の改善を目指す上で「血流改善」が重要とされています。血液は人間の生命活動に欠くことの出来ない役割を持っています。それは、酸素やビタミン、ミネラルなどの栄養を全身の細胞に運ぶ循環と老廃物や痛みの原因となる発痛物質などを回収して排出する代謝機能です。

鍼灸治療はその代謝機能を促進するのにとても有効な治療です。

 

パーキンソン病は薬物療法が中心となりますが、身体の体内循環や筋肉の運動機能が良好な状態の方が薬の効果も良好で、症状の改善や病気の進行の悪化を抑えられる傾向にあります。


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