私たちは身体に障害や痛みを負った時に「治療」を受けます。
一般には現代医学と東洋医学という認識に分かれ、それぞれの理論に基づいて治療方法・治療対象が異なります。
現代医学は、画像診断や検査に基づき、投薬や手術といった科学的・局所的な治療法を中心に用い、心臓・胃腸・負傷部位など病気や不調の原因や主たる臓器を重視して対処します。
また、多くの人に効果がある治療を中心に考え、平均化・数値化・治療のためのガイドラインなどが重要になります。
一方、東洋医学は、自覚症状にあわせ多角的な検査から鍼・灸・指圧マッサージといった経験的・主観的な治療法を用い、患部だけでなく全身を診て身体の不調を内外から根本的に治していきます。
また、個人差を念頭に置いて体質や生活習慣などを考慮しながら、ひとり一人に合わせた治療を重視します。
このようにそれぞれの特徴があるため、現代医学は確定診断や急性の病気や外傷に有効であり、東洋医学は慢性疼痛、原因のはっきりしない病状、手術後のケア、そして病気の予防に有効です。
現代医学で一般的となる投薬治療については、病院に行って薬をもらって飲んで休んで病気を治すという経験は多くの方がされています。薬の効く仕組みは、服用された薬が消化管で吸収され、有効成分が肝臓に送られて酵素によって代謝されます。そして、その有効成分は、循環する血液中に移行して全身を何度も巡り薬効を発揮していきます。
人の身体には個体差があり、症状の度合いもそれぞれなので自己判断での服用には副作用や身体への貯留など注意が必要なこともあります。
また、飲み続けることで症状を抑えることが治ったということにはつながらないケースもあります。
現代はストレス社会と言われるように、仕事や社会活動に加えてデジタル機器の頻用の影響から、脳をはじめ身体が緊張状態にさらされたままの人が多くなりました。そして、移動手段の変化や身体を動かさない業態が増え、運動不足や筋力の低下が見受けられるのも現代社会の特徴です。
多くの人が不眠・便秘・憂うつ・頭痛・腰痛・肩こりなど常習的に体調不良として感じています。
東洋医学を礎にした鍼・灸・指圧マッサージ治療で目指すものは大きく3つあり、それに従って身体を改善していきます。
①血流改善
私たちの身体を循環する血液は、下記のような重要な役割をもっているため、滞ることなく全身を巡ることが大切です。
・酸素や栄養分を全身に運ぶ
・二酸化炭素や老廃物を回収する
・ホルモンや遺伝子を運ぶ
・体温の調整をする
・細菌やウイルスから身体を守る
・傷口を修復する
②中枢神経の鎮静化
中枢神経は脳と脊髄で構成され、全身から集まってくる情報を処理して、全身への指令を発信しています。
情報・指令は末梢神経を介した刺激で伝わります。
③自律神経の調整
自律神経は、呼吸・血液循環・消化吸収・排泄などの内臓や代謝、体温といったさまざまな身体の機能を24時間コントロールしています。
心と身体を緊張状態(活発な状態)にする交感神経と安息状態(休ませる)にする副交感神経がバランスをとりながら私たちの身体を支えています。
鍼治療は痛みの治療、特に慢性疼痛に効果を発揮します。
鍼は刺激した組織に白血球を誘導して患部の細胞を活性化させます。
また、その組織にある末梢神経で受けた鍼の刺激は、信号となって中枢神経へ伝達され痛みを感じている脳を鎮静化します。
身体の各部は多層な筋肉構造になっているため、マッサージの手技では触ることが難しい筋肉の深層部のコリに、鍼治療は直接アプローチすることができます。的確に効率よく筋肉の緊張を緩めることが鍼治療では可能なのです。
筋肉の緊張がほぐれると圧迫されていた血管が拡張し血液が流れやすくなります。血液は酸素と栄養分を細胞に運んで活性化させ、溜まっていた発痛物質を回収して排出します。これが痛みの軽減につながります。
鍼治療には、ディスポーサブル鍼(使い捨て)を各患者様ごとに使用しておりますので、感染事故が発生することはありません。また、鍼の刺激などは、お一人おひとりの体質に合わせて強さを調節しながら施術しております。
灸治療は自律神経を整える作用があり、特に副交感神経を優位にして身体の循環を改善する効果があります。
副交感神経を刺激すると、末梢血管の拡張・腸の蠕動運動の亢進・心拍数の減少などの効果があります。それは、冷え症の改善・便秘の改善・不眠の改善につながります。
心や体の緊張状態は交感神経を優位にし血管を収縮してしまうため、緊張を緩めることで自律神経のバランスが調整されます。身体が休息状態になった時に促進される機能が身体の中にはあります。
心身共にリラックスすることは、健康な身体作りには重要です。
また、運動量や筋肉量が減ると身体の代謝機能が衰えて熱エネルギーを生産することが難しくなり冷えの体質を作ってしまいます。手足の末端やお腹、背中など全身のツボから灸の温熱刺激を身体に入れることによって、弱って冷えている臓器や筋肉の代謝を高めて血行を促進します。
灸治療には、よもぎの下に台座を置いた隔物灸という、肌に直接触れないものを使用しているため、火傷をすることはほぼありません。灸の熱さもお一人おひとりの皮膚や体質をみながら調整しております。
マッサージは当院独自の治療型です。
オールハンドの高い技術力で筋肉と筋膜にアプローチして過緊張状態、いわゆる筋肉が縮んで硬くなった「コリ」をほぐしていきます。
コリは硬くなった筋肉が血管を圧迫することから、周辺の細胞が酸素不足となり、老廃物や発痛物質がたまり、その部分にだるさや痛みが生じます。頭痛、腰痛、肩こりなどです。
身体を動かす骨格筋は、関節をまたいで骨と骨をつなぐように腱でつながれており、筋肉が伸び縮みすることで身体を動かすことができます。そのため患部にあるコリをほぐすには、筋肉が連動していることも考え複数部分のコリを探り、ほぐし、痛みを取り、身体を整えていくことが重要です。
また、筋肉を緩めることで関節の可動域が広がったり、ずれていた骨が骨格のあるべき位置へ戻ることで、身体機能の向上や骨の変形や摩耗を防ぐなど全身を整えていきます。