五十肩


五十肩は正式には肩関節周囲炎と呼ばれ、肩の関節周囲の組織(関節包や腱、滑液包、靭帯など)に炎症が起きることで、肩の強い痛みと可動域の制限が生じる疾患です。主に40歳以降に発症することが多く四十肩、五十肩と呼ばれます。

肩関節の構造

肩関節は上腕骨・肩甲骨で構成され、機能的関節には鎖骨を含めることもあります。

肩関節はボールとソケットのような形をなす骨を筋肉や軟部組織の働きで前後、左右、回旋とあらゆる方向に腕を動かすことができます。

・筋肉:三角筋、僧帽筋、広背筋、大胸筋などアウターマッスルと棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋のインナーマッスル4つが連携して腕を動かします。インナーマッスルは回旋金腱板(ローテーターカフ)とも呼ばれ、上腕骨頭を肩甲骨関節窩にしっかりと保持させ安定させる役割があります。

・関節包:肩関節全体を袋のように包んでいる膜で関節を保持し動きを滑らかにします。

・滑液包:筋肉や腱、骨などの間で摩擦が起きないようクッションの役割となります。

・靭帯:骨と骨をつなぎ関節の過度な動きを安定させます。

五十肩の原因

五十肩の発症メカニズムは不明な部分も多く、原因の特定は難しいのですが、以下の要因が複合的に関与していると考えられます。

 

・肩関節周囲の組織が加齢とともに変性し弾力性や柔軟性が低下している状態である。

・運動不足により、肩周辺の血行が悪くなり組織の代謝が落ち、老廃物が蓄積しやすい状態である。

・日常生活で肩に繰り返し負担がかかったり、無理な動作で筋肉を傷めてしまう。

・冷えやストレスにより普段から肩の動きが悪い状態である。

・こういった状態の肩関節に怪我や強い力が加わったり、何かしらのきっかけが関わることで炎症を起こす。

 

このように使い過ぎや加齢、筋力低下、生活習慣などが関与するため自覚としては自然に発症したとされるケースが多く、五十肩はどなたにでも発症しうると言えます。

五十肩の症状と経過

五十肩の症状は主に強い痛みと可動域制限です。

強い痛みが生じ、肩を上げる、後ろに回す、髪をとかす、背中に手を回す、衣類を着るなどの動作が困難になり、日常生活に支障が生じます。

痛みはさまざまで何もしていない時にも感じる安静時痛、腕を上げたり回したりすると時に出る動作時痛、就寝中に出る夜間痛、肩だけでなく腕や首にも出る放散痛などがあります。

動作時痛は衣服の着脱や髪を洗うなど都度痛みが生じますし、夜間痛は痛みで眠れなかったり目が覚めたり、炎症の強い時期は心身ともに悪影響が出ます。

加えて可動域の制限んおため日常で当たり前の動作が困難になります。

放っておいても治るという話を耳にするかも知れませんが、痛みや動きに不具合が残るケースが大変多いため適切な治療を行うことをお勧めします。

 

五十肩は一般的に3段階の経過を経て変化していきます。

 

1 急性期(炎症期)

発症初期は痛みが最も強く、安静時痛や夜間痛も出やすい時期。

肩関節周囲が炎症を起こしている状態です。

この時期は無理に動かすと悪化させる可能性があるため安静を保ち、炎症を抑えることを優先します。

2 拘縮期(凍結期)

痛みはやや落ち着くが、肩の可動域が著しく制限される時期。

筋肉の萎縮や組織の癒着、関節包の固縮が生じて腕が上がらない、回らないなど関節の可動域が著しく制限され拘縮が進んでいます。

炎症による痛みと拘縮による痛みを見極め、適切な運動療法を取入れる必要があります。

3 回復期

痛みはほとんどなくなってくる時期なので運動療法を積極的に行っていきます。

拘縮によって痛みが出る動きを無意識に避けたり、不自然な動きを獲得してしまわないよう、きちんと治療を続けることが大切です。

可動域を改善し筋力の回復も必要です。

五十肩の治療

五十肩の治療は症状の状態によって目的や方法が変わります。

どの時期にも適切に気を付けなければいけないことがあります。

自然に治ると考えられている五十肩ですが、適切な治療をすることで痛みのコントロール、可動域の改善と機能回復、そして病期を短くしていくことが可能です。

 

急性期は安静を保ち、鍼治療で鎮痛を狙い痛みの軽減に努めます。

鍼の刺激は細胞組織に白血球を誘導して障害を受けていた細胞を活性化させる様働いたり、刺激自体が中枢神経に伝達され脳内でエンドルフィンなどの鎮静物質が放出され痛みの軽減につながります。

痛みは心身のストレスになってしまうため、痛み自体にアプローチする治療法は有効です。

マッサージは炎症患部以外の周辺の筋肉の筋緊張を緩め、血流を改善します。血流が良くなり細胞に栄養が運ばれ回復を促進すると共に、発痛物質など老廃物を排出しやすくなります。

 

拘縮期は硬くなった筋肉や腱、周囲の組織への血流を改善し代謝を促進して柔軟性を回復します。

鍼治療で肩関節を安定させる深部の筋肉の緊張を緩めたり、癒着して動きにくくなっている個所の治療を図ります。

灸治療は消炎作用や血行促進、筋緊張の緩和を促します。

肩だけでなく首、背中、胸の筋肉の緊張も肩の動きに影響するため、マッサージ治療で全体のバランスを整えていきます。

炎症が残っていることや肩の動きに制限がある理由それぞれを見極め、鍼灸マッサージと運動療法を適切に行う必要があります。

 

回復期は炎症痛は消失しているので、完全に可動域が戻っていない場合は積極的に治療をしていきます。

癒着している個所などもあるため、マッサージを中心に腕が上がる最終域や後ろに回す動作を確認しながら筋肉をほぐし、運動療法を加え、痛みなくスムーズに動かせる状態を目指します。

そして、回復した可動域を維持、向上させるために筋力強化が必要です。

 

肩の治療だけにとどまらず、猫背や巻き型など肩関節に負担をかける姿勢の要因となる背中や首などの筋肉も合わせて調整していくことで、五十肩の改善とさらなる予防につなげていきます。


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